・*不器用な2人*・(2)
11時の試験終了のチャイムと共に、私たちは一斉にペンを置いた。

保健医さんは手早く解答用紙を回収すると、職員室へと届けに行き、私たちはHRを受ける為にそれぞれ教室へと戻ることにした。

教室へと戻ると、HRはすでに終わっていて、淳君以外誰もいなかった。

「なんか、掃除当番は試験期間中も体育館だって……」

面倒そうに言いながら、淳君は鞄を肩に担ぐと教室から出てくる。

「どうせ試験勉強やらないし、どうせ他の奴サボるだろうし、手伝う」

相変わらずの言い方に、自然と笑みがこぼれそうになる。

失礼かと思い慌てて顔を背けると、淳君にグイと腕を引かれる。

「珍しく俺が気遣ってるんだから、笑うなよバカ綾瀬」

不機嫌に拗ねた声で言われ、今度こそ笑ってしまった。

「バカにバカって言われちゃった」

小声でからかうように言うと、淳君は軽く私の頭を叩き、先へ歩いて行ってしまう。

1年生の頃よりもずっと大きく見える背中を、私は慌てて追った。

分かりづらくても、見つけづらくても、誰にでも優しさくらい備わっているのだということを、私は知っている。

意地の悪いクラスメートたちにもそれぞれの家があって、それぞれの人生があって、それぞれの将来があるということを、知っている。

だから、人を恨まないようにしたいと思えるし、人を本気で好きになれた。
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