続・鉢植右から3番目
第1章 ダレ男との日常
1、大地と都
長い長い梅雨の間の、久しぶりの晴れ間だった。
今日は、憎たらしいくらいにピッカーンと晴れ上がった空の真下、私はそのキラキラと光る青い空を見上げて、額の汗を腕で拭う。
久しぶりの太陽の光に誘われるようにテンション高く外へ出たはいいけれど、まるで真夏日な日差しに体力を一気に半減させてしまった。
「・・・あっつ~い・・・」
立ちくらみを起こしそうな暑さだ。そして眩暈がするほどの空の青。
吸い込まれそうな青の中、白い尾を引きながら飛行機雲が空を走っていく。それをしばらく眺めていた。
私は漆原都という。
年齢33歳、職業、パート主婦。
独身の間は強烈に憧れたその身分になって、一年が経っていた。まあ実際に体裁も中身も「夫婦」にちゃんとなれたのは、まだ一年にはなってないのだけれど、念の為。
ちょっとしたわけありで親の決めた相手(と言ってもいいだろう)との結婚を決めた私達は、婚姻届に判子を押して役所に提出した日から、一緒に住んでいる。
夫となった男の名前は漆原大地。
ヤツの名前が大地でよかった。実際に、そんな感じの男なのだ。
無口で、ただ淡々と日常生活を送っている。許容範囲がやたらと広くて、自分の周りで何が起ころうが気にとめない、そんな態度は天変地異にもめげずにただ存在している、母なる大地のようだった。
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