続・鉢植右から3番目
奈緒が嫌そうな顔でそれを私の目の前で振る。
「早くとりなさいよ。自分のじゃないのに買ってきてやったんだから!」
とりあえず目の前のその白い箱を引っつかんで膝の上に落とす。何をするのだこの女は!ここは昼間のファミレスだぞ!
彼女が中座をして買ってきたそれは、妊娠検査薬だった。
私が受け取ったので前の席に座った奈緒が、自分のドリンクを飲み干して言った。
「いくら思いつめたって、会社であれがバレて周囲から一斉に攻撃されるのとはワケが違うのよ」
チッチ、と指を振ってみせる。
「同級生にグダグダ責められた位のことで、それほどの体調不良になんか、なるもんですか。ちょっと冷静になったらすぐ判ることでしょ?いいからさっさとトイレ行ってきなさい」
私はポカンと口をあけていた。
「―――――――え?」
イライラと奈緒が片眉を上げる。
「えって、何なの?まさかまだ仮面夫婦じゃないのよね?漆原とやってないの?」
「い―――――――いやいやいやいやいや!」
慌ててバタバタと両手を振った。全く、奈緒ったら!ファミレスで、検査薬だのやっただの、なんてこと言うのだ!
私は小声になって睨みつける。