続・鉢植右から3番目
出し巻卵をくるりとまいていると、何か気配がするぞ、と思ってパッと後ろを振り返った。
そうしたら、ヤツが立っていた。
「うひゃあ!」
私は驚いてシンクに腰を打つ。いたたたた・・・と腰を撫でさする私を見て、ヤツはちょっと呆れたらしかった。
「・・・大丈夫?」
「あ、はいはい。お帰りなさい。驚いたわ~」
「声、かけたんだけどな。・・・都、これ」
ん?とヤツを見ると、何やら大きな紙袋を両手で抱えている。
「何、それ?」
ヤツが黙ってテーブルに置いた紙袋の中を覗き込んだ。
そこには大ぶりの鉢に入った緑の葉っぱと赤い実が。
「おおー!新しい鉢植買ってくれたんだ?嬉しいなあ!これは――――――」
テンションが上がった私が叫ぶと、ヤツが後ろを引き取った。
「いちご」
「かーわいい~!」
両手を叩いて顔を上げると、ヤツは既に寝室へ向かいながら言った。
「食べられるものがいいんでしょ」
え? 私は一瞬考え込んで、ああ、と頷いた。