続・鉢植右から3番目
ヤツがくれたいちごの大きな鉢植は、ベランダへ置いた。そして玄関横の棚にはまたサルビアを復活させたのだ。
その赤い花がそこにないと、何だか視覚的に物足りない、と思ったからだった。
私はいちごの育て方を調べて、毎日楽しみに観察した。
それは素晴らしいことだった。
8月に入って太陽の光もカンカンというよりはギラギラに代わり、クーラーは毎日稼動していて、私は仕事の合間に奈緒がみつけてくれた産院への予約も取り付けた。
それまでの数日間、私は体調に気をつけて、食べられるものを出来るだけ食べ、夜に眠れないならと昼寝を取るようにしたりしていた。
だからその間、不安は忘れていたのだ。
妊娠したかもってことと、ヤツがくれたいちごが可愛くて。ヤツの繁忙期ももう少しで終わりらしく、最近は夜ご飯を一緒に食べる日も増えてきつつあったし。
「さて」
私は自分に号令をかけて立ち上がる。
今日がその日なのだ。つまり、病院に行く日。朝からそわそわして、ヤツを仕事に送り出すときに口走りそうになってしまった。
私、今日病院に行くの、って。
普通なら、そこで夫は「どこか悪いの?」とか聞くはずだ。だけど、我が家の夫は面倒臭がりを煮て固めて、更に燻製したような男である漆原大地、まさかそんな普通の流れにはなるまい。