続・鉢植右から3番目
ということは、朝から無駄にムカつくだけ、と思って、我慢したのだ。
いってらっしゃい、と普通に送り出した。
うん、とヤツは呟いて、いつものように振り返りもせずにスタスタと歩いて行ってしまう。
それから家事をゆっくりとして、今に至るのだ。
財布と携帯と手帳のいつものお出かけセットを入れた小さなバッグに銀行の通帳も入れて、出発する。奈緒が見つけてくれた産院は隣の駅前にあった。
歩けない距離でなかったけど、あまりの暑さに家を出た瞬間から眩暈を感じたので大人しく電車に乗る。
何なの、この暑さ。溶ける溶ける溶ける~・・・。
一駅だけの移動をして、ドキドキしながら産院の門をくぐった。
「あ、ちゃんといるよ。おめでとう、だね」
初老の先生がそう言って微笑んでくれたときには、安心のあまり気を失うかと思った私だった。
いや、まあ、それは大げさだと認めるけど。
ほお~・・・と大きなため息をつく。ああ、良かった・・・いたんだ、本当に。
今日出来る検査はするからね、と言われて次々と違う部屋に行かされた。血圧を測ると、あまりの低さに看護婦さんが眉を顰める。
「これだと結構辛いでしょう。普段から貧血気味なの?」
「え?いや、言われたことないですけど・・・。でも最近食べれてないので」
「うーん、悪阻、酷いなら後の診察で先生にちゃんと言ってね」
念を押されてはーいと返事をする。