続・鉢植右から3番目
去年の夏の、彼の手を思い出す。
こっちにおいでって言ってるみたいだった、あの大きな手のひらを。
それは目に見えなくても、今でもちゃんと差し出されていたんだ。私が見回しさえすれば、いつでもそこに。
ヤツが、立って。
無表情だけど、優しい瞳で。私をじっと見ているんだ。
病院のベッドで、カーテンに仕切られたその狭い空間で、私は一人だった。
化粧も崩れた状態で、シャワーも浴びてないから汗くさかったし、服も皺皺だった。
だけどずっとそれからは微笑んでいた。
腕に刺さった点滴はちょっと痛かったけど。
お腹も空いていて、今夜眠れるかなって思ってたけど。
でもここ最近で、一番幸せな夜だった。
私はもっと、あの人を信じなければならないんだ。
ちゃんと向き合ってくれてるんだって、そこを、言葉がなくても信じないといけないんだ。
でも大丈夫。これからは、ちゃんとあの手を見つけるから。
見付かるまで自分でちゃんと、探すから――――――――――――