続・鉢植右から3番目
2、招待状が2通
ことの始まりは、葉書だった。
その日の夕方、パート先の歯医者から戻ってきた私は、郵便受けに突っ込まれた2通の葉書を手にする。
夕刊とDMの束とその間に挟まって、2通の葉書が端っこだけ顔を出していた。
両手で持ってくるりとひっくり返すと、そこには二つとも同じ文面。一番上に書いてある文字はこれだった。
『山の上学園高等学校79期生同窓会の案内』
――――――――同窓会?
私はとりあえず鞄を抱えて2階にある我が家まで、アパートの階段を上っていく。ヒールが階段でカンカンと音を立てた。
私達は同じ年。そして高校も同じ。クラスが違うかったからクラス会なら別々だけど、学年の集まりならそりゃあ一緒か。
ぼんやりとしたままで鍵を開けた。
初夏でまだ外は明るく、明りをつけないでも部屋の中には光が満ち溢れている。きっとほんの20分前までは、この部屋も夕日が差し込んで一面のオレンジ色だったのだろう。
家具も何もかも、すべてオレンジに染まる。パートのない日の夕方は、私はダイニングに座ってそのオレンジの景色を見るのが好きだった。
ダイニングテーブルに葉書や新聞をおいて、鞄を置いて手を洗いに行った。
そして戻って来て、一つため息、それからおもむろに葉書をじっくり眺める。