続・鉢植右から3番目

4、君への贈り物



 ゆっくりと、だけど確実に、夏が終っていく。


 私は4回目の産婦人科の検診で、ようやく母子手帳の交付を認められた。それからは職場に告知したり、友人に告知したりでなんとはなしにバタバタと忙しかった。

 あれだけ気持ち悪かった悪阻も、ヤツが思っていることを聞けてちゃんと話せるようになったあの入院の夜からは、かなりマシになっていた。私のストレスで悪阻を酷くしていたらしい。

 うーん、これも人体の神秘ってやつか。

 退院をした日に届いた渡瀬さんからの贈り物は、処理に困って押入れに突っ込んだままだ。誰かがあれを開けてしまった日には、私達夫婦の性癖を大いに誤解されることになるに違いない!と断言出来る色々な道具は、いつか奈緒に送りつけてやろうと企んでいる。

 笑った罰だよ、罰。

 それを奈緒にメールもしておいたのだ。すると、『催淫剤が入ってたら、それだけ頂戴。涸れてきてるから、私には必要よ』という、結構笑えない返信が来た。

 奈緒ちゃん、私、心配~。あ、ちなみに、催淫剤は入ってなかったので、念の為。女王様には必要ないらしい。


 私は過ぎていく毎日を丁寧に、ゆっくりと過ごしていた。確かに多少疲れやすくはなっていたけど、他にはいつもと同じ日常で。

 あまりに私の世話を焼こうと煩い母親二人には、これ以上喧しいなら産まれた孫を抱っこさせません!と言うとアッサリと大人しくなったのだ。すげーな、初孫の威力!しばらく使えるな、と私は一人でほくそ笑む。


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