続・鉢植右から3番目
どっしりと構えて、いつでも一歩後ろから、物事の移り変わりを見ているような男。
とにかく、笑わないの。
別に外見だって悪くないんだから、もうちょっと愛想でも振ればきっと周囲の印象もよくなると思うんだけどな~、なんて、妻になった私は思っている。
・・・まあ、ヤツが愛想よくなったらその時点でヤツではなくなるんだけども。なんというか、あの無表情こそが、漆原大地!なのだ。
その、自己主張がほとんどないためによく判らない男とは、小学生から高校生までずっと同じ学校に通っていた。
その割りに、私は彼のことを全然覚えてなかった。あっちも一緒だったらしい。母親に、「兼田都ちゃん、覚えてるでしょう?」と聞かれて、「知らない」と答えたそうだから。
私も母親に、「それって誰?」と聞いたんだった、確か。
驚くべきことに母親同士も学友で、しかも、その当時の親友だったらしい。へー、だ、へえええ!!友達・・・の息子さんと、私はひたすら同じ学校に通っていたのか!って。
同じクラスになったことが一度もない。
だから喋ったこともなかった。
その男と、とりあえず世間からの「早く結婚しないと」攻撃から逃げるために、形だけの結婚をしよう!ということになったのだ。
同居人。エッチなし。他に好きな人が出来たら、その契約は解除(つまり、離婚)。