続・鉢植右から3番目
目の前で一人の女が怒髪天きているのをちっとも気にせずに、ヤツが私と奈緒を交互に見て言った。
「へえ、知り合いだったの」
「そう、ずっと友達よ」
私は頷く。隣で奈緒はヤツを威嚇している。さて、どうしようかな、と思った時に、漆原~!と叫びながら近づいてくる人がいた。
途端にうんざりした顔をして、ヤツが横目でその人を見る。
「あ、木下君」
私の隣で奈緒が言った。
ああ、私も覚えてる。こっちに近づいてくる巨体を見ながら、そう思った。
木下君は柔道部の主将をしていた。運動系も文科系も何故か盛んだったうちの高校で、名を馳せる強豪クラブがいくつかあって、柔道部もそのうちの一つだった。
全校朝礼では必ず壇上表彰があるような。
その主将として、木下君は我が高で有名人と認識されている。
「待っていたぞ漆原!!どうしてこんなにギリギリにくるんだ!早く用意しろよ!スピーチの準備はしてきたのか!?」
大声でそう言う彼の前で、私と奈緒がハモった。
「「スピーチ??」」
当の本人は相変わらず無表情でだらーっとした態度で、自分より更にデカイ木下君を見てぼそりと言う。
「・・・木下、変わって」
「何っ!?」
木下君が仰け反った。