続・鉢植右から3番目
スピーチって何?何のこと!?私が目を点にしてそう思っていると、短気な奈緒が木下君の肩に手をかけて聞いてくれた。
「木下君?漆原君に何してもらうって?」
木下君はそこに私達がいるのに初めて気がついたらしい。・・・失礼なヤツだ。
「あ、ああ榊か!久しぶりだな」
「はい久しぶりね。でもそんなことどうでもいいの。この男は何のスピーチをするの?」
あっさり彼の挨拶をスルーして、奈緒が詰め寄る。木下君はぶっとい眉毛を怒らせて、ダレ男をきっと睨んだ。
「開会式の挨拶だ!こいつは生徒会長だったのだから適役だと思って、ちゃんと伝言で伝えてもらっていたはずなんだ!」
・・・・・へえええええ~・・・・・。実は、水面下でそんな話が?私は口をあけたままで夫を見る。ヤツは興味なさそうな顔でそこに立っている。
あ、電話してきたのって木下君のことなのかな?いや、でもさっき伝えてもらっていたはずって言ったよね。じゃあ違うのか?
私がアレコレ一人で頭を悩ませていると、注目を浴びた元生徒会長は眠そうな目を片手でごしごしと擦って、口を開いた。
「・・・俺よりお前の方が適任だろ」
「え」
木下君が固まる。