続・鉢植右から3番目
「有名で優秀な柔道部の元主将」
「お、おう」
「壇上にも慣れてるし、人気もある」
「そ、そうか?」
「俺がたらたら喋るよりも皆喜んでくれるよ」
「うっ・・・」
「大体俺のことなんか皆忘れてるだろう。お前の方がいい」
「ううっ・・・」
「出来るよな、木下」
「そ―――――――――そう、だ、な・・・。確かに俺が喋るほうが後々面倒がなくて済む・・・ような・・・」
「じゃ、宜しく」
「わ、判った!任せろ!責任は果たしてみせるぞ!」
そう言って親指をぐっと立ててみせると、木下君はなぜかテンションアップで人ごみを掻き分け壇上へ向かって行った。
私はやれやれとため息をつく。・・・あー、でも安心した。ヤツの口車に乗せられるのは私だけで、それは私がバカだからじゃないだろうかって心配していたのだ。
良かった良かった、木下君もまるっきりヤツのペースに乗せられていた。私だけじゃなかった。彼と一緒にバカだと思うのは、自分可愛さが理由でやめておいた。
隣で奈緒が嫌そ~うに呟く。
「あんた、相変わらずよね、漆原・・・。人を使うのが天才的にうまい」
本人は涼しい顔をして、腹減ったな、と呟いて壁際に向かって歩いていく。