続・鉢植右から3番目


 何と、なりたい職業はSMクラブの女王様であると公言し、学校にも鞭とか手錠とかを持ってきていた(らしい)。

 なんせ膨大な噂話のある人で、その美しい容姿とぶっとんだ言葉や行動で、どれも本当っぽいし、どれも嘘っぽくもある噂ばかりなのだ。


 高校に通いながら夜は既に女王様として稼いでいる、とか。

 1年の入学直後から気に入った授業しか出ない、とか。

 先生方も全身校則違反の渡瀬さんには強く言えないのは、すべからく弱みを握られているからだ、とか。

 彼女の持っている学校指定でない黒い大きな鞄の中身は、裸で這い蹲る男の人の写真がたくさん入っている、とか。


 怖くて確かめられない噂ばかりでもあった。

 そしてこれだ。

 今まさに夫である大地がされている、「全身眺め回し」の刑。日本人離れした容姿の持ち主である彼女にじっくりと舐め回すように見詰められると、丸裸にされたかのような、強烈な恥かしさが襲うのだ。

 もう、それは「今すぐ消えさせていただきます!」と包丁を自分の腹に突き立てたくなるような、恥かしさ。

 私はちらりと後ろを振り返る。さすがにダレ男もこれには居心地が悪いだろう、と思って。

 でも大丈夫だった。・・・というか、夫は彼女を綺麗にスルーしていた。壁に背をつけて凭れながら、前に立つ渡瀬さんをちらとも見ないでガツガツとご飯を食べている。

 そのことにまた驚いて、思わずお皿をひっくり返しそうになった。危ない!私まだ食べてないのに!


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