続・鉢植右から3番目

3、暗くて厳しい声



 お皿の上を平らげて、まだ足りないと零すヤツの背中をフォークでつついて、今度はあんたが取りに行け!と脅す。

 無言でだら~っと料理のテーブルの方へいく夫の姿を見送った。

 私を弄ることに気が済んだらしい奈緒が料理を食べだしたので、私は今度こそワインを取りに、バーカウンターの方へと歩いて行く。

「・・・あら、混んでる」

 そこには数人の女性の集団が。もうここから動くのも面倒くさいし飲み物はここだし、みたいな考えでこの場に居るらしかった。

 彼女達を避けて係りの人にグラスワインと瓶ビールを頼む。うちのダレ男はきっとまだ飲めるだろう。家ではアルコールを用意していないので、こんな機会であればビールを楽しんで貰いたい。・・・楽しんでいるかは知らないが。

 注文して待っている間に、肩をトントンと叩かれた。

 振り返ると元クラスメイトの忍田さん。

「あら、久しぶり~!」

 パッと笑顔を作る私に大きく笑みをくれて、彼女が言った。

「ああ、やっぱり兼田さんだ!本当に久しぶりだね~!ここ、3-1ばっかりいるんだよ。少し話ししていかない?」

 元学級委員長である忍田さんはかなりふくよかになった体をゆすってあははと笑う。

 昔から明るくてひょうきんで、クラスのしっかりものだった。そして人気者。どちらかというと地味だった私もよく声をかけて行事に引っ張っていってくれたものだった。

< 45 / 151 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop