続・鉢植右から3番目
でもまさか、こんなところで過去の話で攻撃されるとは思わなかった。一体どこから漏れた話なんだろう。
人ごみを縫って歩きながら、ぼーっと考える。
前の会社の同僚と、佐々波さんが繋がりがあるのかもしれない。そればかりは判らないけど、彼女がかなり詳しく知っているらしいということにぞっとした。
やっぱりあれだね。人間悪いことはしちゃ駄目なんだわ。当時の私はただ恋愛をしていたつもりだったけど、法律違反だったのには変わりはない。ああ、過去の私に戻って部長とホテルに行く前からやり直したい。
タイムマシン、金で買えるなら買いたいぜ。未来の私が色んなことで苦労するのを知っていたとしても、あの時の私は止めなかったかもだけど・・・。
それほど、甘くて暗くて、うっとりとする毎日だったのだ。まさしく蜜の味だったのだ。
しばらく忘れていた過去がいきなり戻ってきて、私はこんなところで途方に暮れた。
ちょっと、どういうことよ、神様。今すぐここに降りて来い。是非話し合おう。
「お待たせー」
壁際でもたれて立って、やっぱり食べ続けているダレ男にビールを届ける。やつが指差した先にはもう一つのお皿が。
「あ、私の分?ありがと」
とりあえず、お礼は述べておいた。実際のところ食欲は完全に無くなっていたけれど。
ダレ男が顔を上げた。視線を感じて背中を向ける。もしかして・・・私、動揺が顔に出ているのかも・・・。
知られたくない、彼には。あの過去のことは。