続・鉢植右から3番目


 子供がいそうには、見えないわね。

 多分、私もそう見えるのだろう。だからさっき、わざと聞いたのだろう。兼田さんは子供さんいないの?って。

 私が不妊治療なんかをしていたら、きっと喜んだのだろう。周りの皆の配慮で子供がいない話はそこで終ったけども。

 つい、せっかく整えた頭に片手を差し込んでしまう。かき回すのは止めておいた。そこは自制が効いた。

 よし、落ち着け私。冷静に彼女を諭すのだ。・・・その努力はしよう。壁を殴るのは後に回すとして。

 ふう、と深く息を吸い込んだ。

「あなたが私を攻撃しても何も生まれないわ。佐々波さんが結婚生活でどんな不満があるのかは知らない。私には関係ない。だから、あなたも私の生活には関係ないわよね」

 静かな化粧室に私の淡々とした声が響く。

 あまり怒らせないでよ。これ以上は自制も効かなくなっちゃうわよ。そう願いをこめた。

 だけど既に十分熱せられていた彼女の頭はすでに制御不能だったようで。

 急にバッと洗面台に走ったと思ったら、水を出して両手に受け、それを私にぶっかけたのだ。

「きゃあ!」

「妻の気持ちがあんたに判るの!?」

 頭から水を被って、私は顔を攻撃から守るために後ろずさる。

 化粧が化粧がっ!!




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