続・鉢植右から3番目

4、 眩暈のワケ



「あらあ、随分とびしょ濡れねえ」

 後ろで私に迫ってきていた足音も止んだから、佐々波さんも止まったらしかった。

 ホテルの廊下、エレベーターホール近くに置かれたソファーの上で、猫のように体を伸ばして寛ぐ渡瀬さんを発見。

 ・・・・え、何で、この人こんなところにいるの?

 何だかさっきからそんなことばかり思ってる気がするけど、と私は髪から滴を垂らしながらうんざりした。

 同窓会が行われている会場がある階から2つ上階のこのフロアーは、会議などに使われる小規模な部屋が並んでいるみたいだった。

 幸いな事に、1つだけ使われていた部屋も既に催しは終了していたようで、フロアーは静まり返っている。

 折角の都会で、折角の夜。滅多にこないレベルの高いホテルに、久しぶりのお洒落、懐かしい顔ぶれ。これから盛り上がっていくはずの同窓会。

 その会場からやたらと離れた静かな廊下。

 そんなところで、何故私はずぶ濡れで立っているのだろう。

 逃げようとした先には元SMクラブの女王様。そして後ろにはイカれた女。うわー!だよ、もう。うわー!!

 渡瀬さんはだらりと革張りの白いソファーにもたれかかって、色気を駄々漏れにさせてこちらを見ている。

 長くスリットの入ったスカートから覗く白い太股がなめまかしい。

 目のやり場に困る、と視線を上げるとその美しい瞳とバッチリあって、私はハッとした。

「ええと・・・渡瀬、さん。何故ここに」


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