続・鉢植右から3番目
第3章 ギラギラと突き刺さる
1、カフェにて決心
朝早くから、バタバタと支度をして出かけた。
台所に設置したホワイトボードには、まだ眠っているヤツへの伝言を書いてきた。
――――――用事があるので、実家に行ってきます。晩ご飯までには戻ります。
そう書きなぐっている時には、とりあえずの時間稼ぎが欲しかったのだ。
実際には実家なんぞに用はなく、こんな朝早くから行ったなら母が頭から角を出して怒るはずだ。
常識を考えなさい、バカ娘!と言って。
しかも、その後に続く言葉も予想出来る。きっと母親はこういうはずだ。私の後ろを覗き込んで、『あら?大地君は?』って――――――――
で、娘が早朝から一人で戻ってきたと判るや否や、私の理由は聞かずに電話へすっ飛んでいくに違いない。そしてそして、学生時代の親友で今は親戚の間柄になった漆原家の母に電話するに違いない。
すると漆原冴子さん、つまり私の義母は即行で息子に電話して、嫁の捜索を命令するだろう。
『大地いいいいいい~!!』と電話口で絶叫する冴子母さんの声が想像出来る。ヤツはその時、きっと受話器をゆうに20センチは耳から離しているはずだ。
母親に反抗や抵抗するほうが面倒臭いと思っている男、夫である漆原大地はだら~っと私の捜索に出かけ、見付からないと昼には父親達までが借り出されて、事が無駄に大きくなる。
だから、用がないならなおさら実家へは行けない、と。