続・鉢植右から3番目


 爽やかな笑顔と元気な声。これが朝のサラリーマンに活力を与えるのだなあ!と感心してしまう、いつでも変わらないもてなしだった。

 こちらも思わず笑顔を返す。

「いらっしゃいませ」

 カウンターの中で白いシャツを腕まくりして、ここの名物岡崎店長(男性、容姿端麗、無駄に色気たっぷり、推定年齢30代前半)がキラキラと輝く笑顔で会釈してくれる。

 一気に心の中が明るくなったのを感じた。

 ・・・いいのよ、どうせ私は単純な女。



 一人用の席について、モーニングを注文する。出かけに一応パンを口に突っ込んできたけど、足りてないとお腹が言っているし、このご飯なら満腹でも入る自信がある。

 早く家から脱出することだけを考えていたので、パンもほんの一口だったし、よく考えたら化粧らしい化粧もしていないのだ。

 日焼け止めと、眉毛くらい。

 しまった。岡崎店長の顔拝むなら、化粧ポーチももってくるべきだった・・・。それかせめてマスカラくらいは!

 不倫をしていた時は、いついかなる時に妻帯者であった上司から電話がきてもすぐに飛び出して行けるように、寝ている時以外は小奇麗にしていた私はどこに行ったのだ。

 これが、結婚の威力でもあるのか~。もう相手がいるということ。待ちの姿勢でなくてもいいということ。

 ・・・それにしても、ほとんどスッピンだよ。私ったら、女力が低いヤツだわ!


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