続・鉢植右から3番目


 水の湧く音、それから店内を流れる静かなシャンソンと、客と店員の楽しそうな会話。

 店内には溢れる緑。私はその心和む風景を見回して、口元に笑みを浮かべた。

 久しぶりにきたけど、やっぱりここのカフェは素敵。

 それでも一通り店の中の観察を終えてしまうと、どうしても考えずにはいられなくなった。


 頭の中一杯に広がるのは、昨日のことだ。

 思わず目を伏せて眩しい外の光景を遮断する。

 昨日のことを思い出すにはここから見える風景はキラキラ光りすぎる。

 重いため息を零しそうになって、慌てて飲み込んだ。



 昨日の夜。

 同窓会を抜け出したフロアー違いの廊下で、騒動を起こしたバカ女、佐々波さんが逃げて、後には私と、渡瀬さんと、ダレ男が残された。

 どこから聞いていたかは知らないが、渡瀬さんが来てからもずっと、私の過去の不倫話はしていたのだ。きっと、夫も聞いただろう。

 私が不倫をして、人の家庭を壊したことがあるって。

 何を言われるかと怯えていた。


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