続・鉢植右から3番目
本当の話?と聞かれたら何て返せばいいのだろうか、と緊張して固まる頭の隅っこで考えていたりもした。
そうよ、でももう終ったことよ、などと言えるだろうか。
嫌悪で一杯の目で見られたらどうしよう。
無視されたらどうしよう。
隣で渡瀬さんが明るく気軽にヤツに話しかけている声も届かないほどに、私はガチガチに緊張していたのだ。
だけど、ヤツはこんな場面でもやっぱりヤツだった。
近づいてきて、普段通りの声と無表情でヤツが言ったのは、「服着たままで泳いだのか?」という台詞だったのだ。
ずぶ濡れの私を見て。
私の体から、一気に全部の力が抜けて、その場で転ぶかと思った。
危なかった。これで更に転んで頭なんぞ打った日には、もう世を儚みたくなるに違いない。
何とか足に力を入れて、転倒を免れる。
「・・・・・いや、そんなわけないでしょ」
疲れた私がうんざりしながら呟くと、渡瀬さんが弾んだ声で言う。
「本当に漆原君っておかしな人よね~。ま、とりあえず、あなたは着替えないとね」
そう言って、どこから出したかスマートフォンを取り出した。
私はつい、瞬きをする。どこから出した??え、まさか胸の谷間とか?その服、ポケットなさげだけど??スマホの出所を探してついじろじろとガン見してしまった。