続・鉢植右から3番目


「あなたの奥さんを連れて行って。こんな状態では帰れないでしょ?」

「・・・タクシー呼ぶからいい」

 ボソっとヤツが呟く。てか、おいおい!おめー、エレベーターに私を乗せるのが面倒臭いとか思っただろう!絶対思った、この男。

 あ、それかアレだ。後で覗きにくる渡瀬さんの相手を面倒だと思ったか。どっちにしろ、愛を感じないぞ、愛を!

 私が引きつってヤツを睨んだのと、渡瀬さんが腰に手を当てたのが同時だった。

「あらあ~、しばらく見ない内に、会長様は随分とマメになったのねえ~」

 しゅっと形よく片眉を上げた。

 嬉しそうに瞳を細めて、元副会長である渡瀬さんは言う。

「この人が風邪を引いたら看病するのね~」

「・・・」

「病院に連れて行って、病人食を作って彼女に食べさせるのよねぇ」

「・・・」

「それは素敵ね~、漆原君がそんなことを!」

 渡瀬さんはスマホをもったままで両手をパンと合わせた。

「あんなに面倒臭がりだったのに、やっぱり愛しの奥様が出来ると人間も変わるものなのねえ~。ってことは、漆原君、勿論、薬の手配も―――――――」

「1109、了解」

 ヤツが片手で目を擦った。


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