続・鉢植右から3番目
私の返事にまた頷いて、ヤツは風呂へ行ってしまった。
設置場所が遠い、ってことは、仕事で遠方へ行くってことだな、と理解した。1年一緒に住んで、ようやくうっすらと彼の仕事内容が判ってきた私だった。
彼の仕事は什器の企画や設置。無口で面倒臭がりのヤツは、対人間でなく力仕事が主な内容の仕事を選んだらしい。
百貨店やスーパーが閉店したあとに、翌日からのイベントなどの会場作りなどをしている(らしい)。
一緒に働くのはアルバイトが大半の、ヤンキー上がりかとび職出身者ばかり(らしい)。いずれもコミュニケーション能力は足りないが、元気と力がある若い兄ちゃん達なんだとか。
ヤツにとっては楽に呼吸が出来る職場なのだろう。
とにかく、明日から朝は早い、そして夜は遅いんだね。
と、いうことは、今日はもう話をするチャンスはない。食後にいつもの読書タイムに入らなかったのだから、きっとお風呂から上がったら寝るつもりなのだろう。
明日は多分、顔も見れない。
私だってパートに行かなきゃならないし、今晩を逃してしまったらもうチャンスはない気がする。
なのに―――――――――――
・・・・また聞けなかった。
食事時という絶好のチャンスを逃してしまった私は、テーブルの上で一人苦しんで顔を歪めていた。