続・鉢植右から3番目


 すれ違ってばかりの毎日が始まった。

 夏の帰省にあわせて全国の百貨店やスーパーが色々催しものをするのだろう。だから彼の仕事としても繁忙期で、今日はあっち、明日はこっち、と色んな場所の会場を走り回っているようだった。

 そういえばヤツは、土日祝はイレギュラーもたまにはあるにせよ平常は休みだけど、お盆休みはない。

 去年もお盆休みは私は一人で実家に帰ったのだった。

 朝は私より早いし、夜は寝てから戻ることが増えた。疲れきって帰ってきて、ぐっすりと寝込むために肌の触れ合いもなかった。

 そして本来休みである日曜日も、ヤツはどこかへ出かけてしまう。

「え、今日も出るの?」

 次の日曜日、私が朝から素っ頓狂な声を出すと、すでに財布をポケットに突っ込みながら、まだ眠そうな顔でヤツは頷いた。

「今ちょっと忙しい。予定ないなら、まだ寝とけば」

「予定・・・は、ないけど。別に寝不足じゃないよ?」

 それは若干嘘だった。だけど、ヤツが早く起きだしたので私も慌てて起きた手前、そう言いたかった。君の為に起きたんだじゃないもーん、てなパフォーマンスだ。

 私は膨れていたのだ。話も全然出来ないし、肌の触れ合いもない最近に対して。パートナーの不在を、色んな意味で、色んな場所が主張していた。

 ヤツがちらりと私を見る。

「・・・何?」

 その視線が気になって聞くと、玄関に向かいながらぼそっと言った。


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