ヴァイス君の日常
『キュルルル』
俺の呼ぶ声にやっと反応してくれたお嬢さん。
鳴きながらバサバサと翼の音をさせて降りてきた。
「きっ、来たっっ!!!」
喜んでニコルの方を見れば
「やっとだね」と苦笑い。
そんな事はどうでもよくてお嬢さんが来てくれた事に感激していた俺。
『キュルル』
かわいい声で鳴くお嬢さんに飛び乗って
「じゃあ、行くぞ!」
「それじゃ、後でね」
俺が飛び立ったのを合図に一斉に飛び立つワイバーン達。
騎馬隊の馬達も丘を目掛けて駆け出した。
「ひゃっほーい!」
頬を通り過ぎる心地よい風を受けながら有頂天だった俺は肝心な事を忘れていた。
目指して飛んでいるのは騎馬隊が向かった丘の上。
なのにお嬢さんはそこを通り過ぎて行く。
「え?何でっ?」
慌てて下を覗くとニコルの間抜け面が見えた。
「ねぇー!何処行っちゃうのー?」
ニコルの叫び声が微かに耳に届いたが振り向いた時にはニコルの姿は点になっていた。
「お、お嬢さん??何処に向かっているのかなぁ?」
そんな俺の声を無視してひたすら飛び続けるお嬢さん。
そう、お嬢さんの機嫌は全く良くなっていなかったのだ・・・
「俺、今日帰れるのかな・・・」
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(その頃、丘の上では)
「あーぁ、見えなくなっちゃったね。君のとこの団長さん」
「すみません、ニコル様」
「君が副団長さんだっけ?」
「はい、レイと申します」
「じゃあ、このまま始めようか。ヴァイスは戻って来なさそうだしね」
「は、はいっ!よろしくお願い致します」
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団長抜きで無事に合同演習を終えたのだった・・・
(終)