ヴァイス君の日常
ニコルを睨み付けていた王子は
「行くぞ」
姫さんの腰に手を回して部屋を出ようとする。
「え?ちょっと待って」
それを止めたのは姫さん。
「まだ、何かあるのか?」
俺達に向ける鋭い視線とは違って、どこまでも優しい。
「まだニコル様にお薬を渡していなくて・・」
姫さんが持っていた薬をそっと取ったと思ったら・・・
・・・ビュン--
手が切れそうな勢いでニコルに投げつけてきた。
「うわっ!兄さん!?」
「飲め」
その二言を告げると歩き出した。
「お二人ともお大事になさって下さいね」
ドアが閉まる前に声を掛けてくれた姫さんに手を振る。
鬼がいなくなった部屋はしーんと静まり返っていた。
「おい、ニコル」
「な、何だい?」
「お前、寿命が縮むような行動するんじゃねぇよ・・・」
「まさか、兄さんが現れるとは思わなかったんだよ・・」
病人なのに戦場に放り出された気分を味わった俺達は、その夜まで魘され続けたのだった。
(終)