ヴァイス君の日常


さっきはバターの香りが鼻を擽ってイイ匂いだったのに、このクッキーは匂いが全くしない。

違和感を覚えたが、空腹だった俺はそれほど深く考えずに口に放り込んだ。



・・・バリッ、ゴリッ、ガキッン


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


ありえない歯応えと味に思考回路が停止した。

まず、チョコ味だと思っていた茶色は焦げた色だったらしい。

口の中に苦味が広がった。

そして、この歯応えはクッキーの中に異物が入っているとしか思えない・・・


---石でも入ってんのかっ!?


苦味と共に新たに広がる鉄の味・・・血か・・・?

クッキー食って流血したの初めてなんだけど・・・


「おいっ、どうしたんだ血なんて流してっ!?」


俺の口からダラダラと流れ続ける血を見てジルが慌てて駆け寄ってきた。


「クッキー食ったらこうなった」


「お前、どのクッキー食ったんだっ!」


山盛りになっていたクッキーの中からハート型のクッキーを指差せば


「ありゃ、パール様が作ったヤツだ」


それを聞いた俺は慌ててトイレに駆け込んだ。

どうしても飲み込む事が出来なかったそれを思いっきり吐き出す。


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