ヴァイス君の日常


「姫さん、皆に配ってんのか?」


ククッと笑っていると


「クッキーと言えば・・・確かパール様もクッキーをお作りになったって聞きましたよ?」


「そのクッキーのせいで俺の口の中は血だらけなんだけどね」


それを聞いたルイスは「え?もう貰ったんですか?」と驚く。


「貰ったんじゃなくて、姫さんが作ったヤツだと思って間違えて食っちまったのっ!!」


「そ、そうですか・・・それはお気の毒ですね」


歯切れの悪いルイスは何か隠しているようだった。


「おい、何を隠してるんだ?」


俺を哀れみの目で見てくるコイツは何か知っているに違いない!


「あ、いえ・・・パール様が作ったクッキーはヴァイスへの差し入れだと聞いたので・・・」


信じられない言葉が頭をすり抜けていった・・・


「パール嬢が俺に差し入れ・・・?」


じゃあ、あの厨房に置いてあった大量のハート型クッキーは俺に・・・?


「えぇ、そう聞いていますが」


「俺、まだ死にたくねぇ・・・」


「頑張って下さいね。薬はたっぷり用意しておきますから」



それから暫くの間、パール嬢に追い掛けられて城内を逃げ回る俺の姿があった。






(終)
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