ヴァイス君の日常
俺とパール嬢
キョロキョロと辺りを見回し、安全を確認してから足を踏み出す。
周りから見れば挙動不審な俺の動き。
だけど今、そんな事は気にしてられねぇ。
「ヴァイス───っ?」
遠くで俺の名前を叫んでいるのはパール嬢。
そう。俺は、パール嬢から逃げていた。
───1時間前
俺はある場所に足を向けて歩いていた。
誰も居ない廊下を忍び足で進んで行けば、そこにあるのは厨房。
昼飯は食ったのに腹が減って仕方ない俺は、食い物の匂いにつられて此処までやってきた。
「あ~、いい匂い・・・」
この甘い匂いは何だ?
くんくんと匂いを嗅ぎながら厨房の奥へと進んで行けば・・・
テーブルの上に用意されたバカでかいケーキ。
---すげぇ、旨そう・・・
三段になっている、そのケーキは生クリームがたっぷり塗られていて。
一番上段にはラズベリーや木苺等のフルーツがたっぷりと盛られていた。
ケーキに手を伸ばそうとした時だった。
「ねぇ、フローラ様。あれに、もう少し加えたいんですけど」
隣の厨房からパール嬢の声が聞こえてきた。
「え?何をですか?」
それに答える姫さんの声も。
伸ばしていた手を引っ込めて、テーブルの下に隠れる俺。
何だか嫌な予感がしてくる・・・
「匂い粉」
「えっ?匂い粉??」
パール嬢の言葉に驚く姫さん。
「わっ!?ちょっと、待ってください!!」
「・・・・・」