ヴァイス君の日常


「ど、どうしよう・・・」


そっとクロスを捲ってテーブルから顔を出せば、姫さんが困惑気味にケーキを見つめていた。


「・・姫さん」


誰も居ない筈の厨房で聞こえた俺の声に、ビクッとした姫さん。


「ひっ!え?ヴァイス様!?」


驚いて目を丸くする姫さんの前に出て行けば


「どうしてこんな所に・・・」


「いや・・腹減っちゃって」


俺の言葉にポカン顔。


「ところで、さっきの話って・・・」


「あ・・その・・聞いていましたよね?」


「うん」


俺の問いにバツの悪そうな姫さんだけど・・・

別に姫さんのせいじゃないのに。


「このケーキは食べない方がいいです」


そうきっぱりと言った姫さんに、こくこくと思い切り頷く。


「こんな恐ろしいモン食えねぇよ」


ちらりと見れば、テーブルの上にあるケーキは匂い粉で覆われていた。

ゾッとする物体に顔が引き攣る。


「先程も言ったように、この粉には媚薬効果があります。命に別状はありませんが副作用があって、男性が口にすると考えが女性らしく、女性が口にすると男性らしくなってしまうんです」


「は?」


何だ、その副作用・・・

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