【短編】惚れやすい女
惚れやすいわたし、ならではだなって思った。

普通の人になって、優しいから惚れたんだ。



【啓くんは前に進んでますか?】


意味深なメールを送ったのはわたしが酔ってたから。

お店で女友達と飲んで酔った勢いでメールを入れた。


こんな意味のわからないメールが届いたから不思議だったんだろう。

啓くんが電話してきた。


『おもしろい子だね。前に進んでってどういう意味?』


普通わかるやろ…。

そうだ、啓くんはちょっとおバカさんだった。

遠まわしな表現は通じないってことを思い出した。


「だーかーらー、新しい恋した?ってことだよ。」


酔った勢いで言う。

言い方で気付いたのかな?


『里香ちゃん、酔ってるでしょー?』


って笑った。


「酔ってないし、酔ってないし。」


慌てて言うけど


『人間本当のことは1回しか言わない。』


とか言ってCMのまねをされる始末。

わたしは笑ってゴマかした。


『で、何?新しい恋?』


「そうそう。したのかなーって。」


すると啓くんはうーーーーんとうなりながら答えた。


『微妙かな。』


その言葉がわたしの心臓に矢が刺さったかのような衝撃を受けた。

もうわたしなんて眼中にないんだって。

フッてるし、連絡もこないし当たり前だろうけど。
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