小さな初恋
「どうせならもっと…


叶う恋なら…

良かったのにな…?」




勢い良く立ち上がって、

俺は葵の方を向いた。



「なにも言わないでいい…

ただ、
知っていてほしいんだよ。


俺の気持ちを…」





━━━「愛斗?」



俺の名前を呼ぶ葵が、


本当はいつも遠くにいるように感じていた。



どんなに好きでも、

叶わないと突き付けられたのは…



いつも兄貴を呼ぶ声だった。


━━━「健斗?」



ほら…

優しい響きが俺の心を悲しいくらいに締め付ける…





「…愛斗…」


静かに俺を呼ぶ。



その声は、

兄貴を呼ぶみたいに優しかった…




「愛斗、帰ろっか?」













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