悪魔的に双子。
「青ちゃんと有志くんは百合人に会うの初めてね。百合人、あいさつして。」


お母さんがにっこりして『百合人くん』に言った。


「……こんばんは、はじめまして」


ぼそぼそと聞こえてきたのは、もちろん声変わりはしているが、まぎれもなく子どもの声だった。


「「……こんばんは、はじめまして」」


わたしと有志は、機械的に百合人くんの言葉を繰り返した。


戸惑いを隠せない。


お母さんの弟?わたしたちとほとんど変わらないではないか。


その前に何でいままで一回も会ったことないんだ?


いろんな疑問が頭を駆け巡ってわけが分からない。


「さ、みんなお腹空いてるでしょ?ご飯食べましょう」


お母さんが優しく微笑んで立ち上がった。


「何で百合人がここにいるのか先に話してよ」


唯流の怒ったような声がお母さんの動きを止めた。


お母さんがゆっくりと振り返る。


「先にご飯、よ、ね?」


唯流に向かってにこやかにのたまう。


身の危険を感じたらしい唯流が一歩退いた。


そのまま何も言えずに台所に消え去るお母さんを見送る。


泣く子も黙る、ならぬ唯流も黙るお母さまの必殺スマイル。


願わくば、あの笑顔一生向けられたくない。



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