悪魔的に双子。
お母さんのお父さん、つまり唯流と真昼のお祖父さんはずっと前に亡くなっているらしい。


おばあさんには五年前の対面以来会っていない。


もしかして、真昼唯流もあれ以来会っていないのだろうか。


会いに行っているような気配は今まで一度もなかったし。


それにさっきの反応からしていい感じではなかった。


普通自分の祖母に対して『あの人』はないだろう。


五年前、おばあさんに会った時の印象はかなりおぼろげだが、優しそうで、全然おばあちゃんって感じのしない人だなって思ったことは覚えている。


授業参観で誰かの母親として出席していても違和感はなかっただろう。


百合人くんの存在でわかった。


なるほど実際に若かったのだ。


「百合人、青ちゃん、有志くん。これから一緒に暮らすんだし、自己紹介しとく?」


お母さんがにっこり笑った。


百合人くんが素直にぱたっと箸をおく。


日本人形みたいな顔に無表情をはりつけて、百合人は単調に自己紹介をはじめた。


「松木……ユリヒトです。高二、O型です。よろしくお願いします。」


丁寧に下げられた頭に、わたしと有志も反射的に頭を下げた。


「そ、園村青、中二、A型です。よろしくお願いします。」


「そ、園村有志、中二、A型です。よろしくお願いします。」


真昼と唯流が小さく笑いをもらす。


むっとしたが、とりあえずスルーしておくことにした。


自己紹介が終わって再びシーンとなる。


「ゆ、百合人って綺麗な名前だね。」


この空気の中、そう言ってのけた我が兄に敬意を払わずにはいられない。


有志はなんとかこの気まずさを打破したいらしかった。


名前を褒められた百合人くんは首をかしげてようやく微かな笑みを漏らしてみせた。


「ありがと、有志くんの名前は時々学校のポスターとかで見るよ。」


…………ああ、あれね。


ボランティア募集とかの際に使われる文句。


『有志求む‼」


有志の笑顔が引きつったのがわかった。


百合人くんはまた無表情に戻っている。


悪意があるのかないのかわからない。


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