悪魔的に双子。
物置の中に入ってどれほどの時が過ぎただろうか。


家の中には人の気配がない。


三人とも、どこへ行ったというのだろう。


お父さんもあみこさんも夜にならなければ帰ってこない。


わたしは汗で額に張り付いた髪を払う気力もなく、ぼんやりと壁にもたれかかっていた。


もうろうとする。


暑い。


頭の中にあったのは、水が飲みたいってことと、ひたすらに誰かこの扉を開けてってことだけだった。


「……ゆぅしぃ」


小学三年生にもなってかくれんぼなんてしなければ良かった。


唯流の挑発、しかも直接わたしに向けられた訳ではないものになんてのるんじゃなかった。


ぐわんぐわんしてまともに働かない頭の中に、ふとある顔が思い浮かんだ。


「……真昼っ」


天使みたいな憎らしい男の子。


こんな時に限ってなぜか笑顔の真昼を思いだす。


再びわたしの目に涙が滲んだ。


なんでわたしだけ置いてっちゃったんだと、自分勝手な心が喚き散らす。


「……助けて……こっから出たいよ」


働かない頭の隅で、ふいにドタドタと廊下を走る声が聞こえた。


「青っ、青‼」


あんなに押しても開かなかった扉があっさり開く。


急に明るくなってわたしは目を細めた。


「ごめんなさい、青、ごめんなさい」


顔をあげると、ぼろぼろと涙を流す真昼の姿があった。


白い頬を透明な雫が痛々しく伝う。


「青、大丈夫?動けるかな」


「……有志?」


そこには、妙に冷たい顔をした有志がいた。


怒ってる。


有志、すごく怒ってる。


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