悪魔的に双子。
次の日、わたしと百合人くんは電車に乗って、隣町のさざみ商店街にやって来た。


……何故か、真昼も連れて。


朝、玄関で靴を履いているところを、起きたばかりの真昼に見つかった。


「……こんな時間に出かけるの?」


眠そうに目をこすって真昼が尋ねてくる。


「こんな時間って、寝ぼけてるでしょ。もう9時は回ってるよ。……そんなに目こすったら、後で痛くなるよ。……部活は?」


「今日休み。で、どこ行くの?」


「……んー、どこっていうと…」


百合人くんについて行くことになっていたので、その時はどこに行くのか知らなかった。


わたしが口ごもるのを見て、真昼が眉をつりあげる。


ただでさえ、起きぬけは機嫌が悪いのに、あんまり良い兆候じゃない。


「何?言えないの?……あ、あの一年生みたいなリンタロ先輩と会うんでしょ」


「な、なんで凛太朗先輩が出てくるのっ」


真昼の口から出てきた予想外の名前に、わたしは自然と頬が熱くなるのを感じた。


リンタロウ


この名前の響きを聴くだけで、わたしは少なからず動揺してしまう。


「っ、その反応、やっぱりリンタロなんだっ。そんなに好きなの?リンタロなんかがっ」


「違うよっ、それと、リ、リンタロって呼び捨てにしないでよっ」


なぜか目じりを赤くして怒る真昼に必死で言い返しながら、わたし、真昼に凛太朗先輩のことが好きなこと話してないよね、と自分の内に問いかけていた。


「今日はっ、百合人くんと出かけるのっ凛太朗先輩には夏休み中会えないんだから‼」


凛太朗先輩とは、夏休みに入ってから会っていない。


凛太朗先輩と会う約束、一回くらいこぎつけておけばよかったと、一学期が終わってから後悔した。


夏休み中凛太朗先輩には会えないんだと言うことを急に思い出して、半ば八つ当たりで大声を出したわたしをよそに、真昼の顔の色が、サーッと青くなった。


「ゆ、百合人と出かけるの」


「そうだよ」


かすれ声で尋ねる真昼に、わたしは鼻息も荒く答えた。


数秒、真昼が下を向いて何かを考えるそぶりを見せた。


いい加減、外に行かないと、百合人くんが待っているんだが。


「あの、わたしもう行……」
「僕も行くよ」


「……へ?」


わたしの言葉をさえぎるように紡がれた言葉に、わたしは軽く目を開いた。


さっきまでの、子どもな怒りっぷりはどこへ行ったのか、急に静かな表情になって、真昼がわたしの目を見る。


「僕も一緒に行くよ…その、弟の義務として」


……だから、何の義務だ。





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