悪魔的に双子。
さざみ商店街は賑やかな通りだ。


コンビニやらなんやらに負けないで、今日も活気づいている。


小4で始めて来た時も思ったのだけれど、ここは何とも不思議な空間だ。


八百屋さんや肉屋さんがあると思ったら、女の子が好きそうな可愛い雑貨屋や、服を売っている店がある。


客層も、おじいさんおばあさんから、わたしたちみたいな子どもまで、実に幅広い世代の人間が入り混じっている。


デパートに行ってもそんな感じではあるけど、この外なのか中なのか分からない微妙な通りの空気が、特別感を演出していた。


「どこか行きたいお店あるの?」


わたしは右隣を歩く百合人くんを見上げて声を張った。


人が結構いる上に、天井に音が響いて、少々の声では相手に届かない。


「古本屋に行こうよ、もう少し静かなところ行きたい」


左隣の真昼がわたしの耳に直接囁いた。


人が多いところが苦手らしい真昼は、早くも顔に疲労が滲んでいる。


勝手について来たのだから、知ったことではない。


わたしは真昼の言葉を受けて、伝言ゲームのように百合人くんに伝えた。


「真昼は古本屋行きたいって言ってるんだけど」


自分が連れてきたくせに実はここに来たのは初めてらしい百合人は、黒い瞳をきらきらさせてあっちこっち見るのに忙しいらしい。


わたしが話しかけても気づかない。


わたしは苦笑って、再び左隣の真昼を見た。


顔の色が蒼白だ。


もともとの色が白いから、気づきにくいけど、この結構な暑さの中で、この顔色は少々いただけない。


「あーもー、古本屋行こう」


わたしは両隣の手をぐいっとつかんで、古本屋の中に引っ張りこんだ。


「いらっしゃいませ~」


店員の気の抜けた声が出迎えてくれた。


静かで窮屈な空間。


ところせましと並べられた本棚が、いくつかの狭い通路を作り出している。


外にはあんなに人がいたのに、ここにはほとんどいない。


理由は簡単。


すっごく臭いからだ。


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