悪魔的に双子。
正確にはホコリ臭い。


木で出来た棚(すいばりがたちそうでちょっと怖い)の上にも本の上にも当然のごとくホコリが降っていて、天井には安定して蜘蛛の巣が2、3ある。


巣の位置が来るたびに変わっているところを見れば、多分、とってはいるんだと思う。


いや、思いたい。


どっちにしろハウスダストのアレルギーがある人には悪夢のような場所だ。


お店始めてから一回も掃除していないんじゃないかと疑われてもしょうがない。


「なんか、ホコリっぽいところだね」


遠慮のない百合人くんが、ポツリとつぶやく。


「人間の密集地よりはマシだ」


青い顔の真昼がうめいた。


「大丈夫?飲み物買ってこようか」


内心、ついて来るのが悪い、と思いながらもいちよう心配してやると、真昼は弱々しく首を振った。


「いい。しばらくはしごに座ってる」


そういえばこの店にははしごがあるんだった。


棚の上にも遠慮なく本が積んであるから、はしごなしでは店中の本を見ることはできない。


よくもこんな大雑把な店が潰れずにあり続けられるものだと思う。


でも、わたしが初めて来た時よりずっと前から、ここにあるのは確かだ。


なんだかんだで、わたしもこのお店が嫌いではない。


久しぶりに来たので、少し気分が高揚する。


「わたし、本見てるね」


真昼と百合人くんに言い残して、わたしは吸い寄せられるように、本の中に潜り込んでいった。

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