悪魔的に双子。
「もー、おじさん、もうちょい片付けなっていつも言ってるでしょ」


「お前が片付けてくれるからいいだろ」


「……俺、家政婦じゃないから」


凛太朗先輩があきれた顔をして、無精髭を生やしたオジサンを見やる。


本の中に埋れてあくびをするオジサンは、茫然とするわたしたちの存在に気づくと、悪人っぽい面の上に愛想の良い笑みを浮かべた。


「凛太朗の友達?はじめましてーこの店の店長兼凛太朗の叔父さんやってるおにーさんでーす」


「…はぁ」


どう見てもおにーさんという年齢ではない。


もしかして、笑いどころだっただろうか。


わたしは失礼になってはいけないだろうと、必死に頬を引きつらせて笑顔をつくった。









「終業式ぶりだね、ちょっと話さない?お連れの二人も一緒に」


凛太朗先輩は真昼と百合人くんを見てにこっとした。


わたしたちは出口のところで先輩に遭遇するやいなや、天然スマイルを満面に浮かべる凛太朗先輩に、店の奥に拉致られた。


先輩はやる気なさげにレジのカウンターの中に座っている高校生くらいの金髪のお姉さんと親しげに言葉をかわして、カウンターの中の扉へとわたしたちを引っ張りこんだ。


正確には腕をひっぱられるわたしを追いかけて、真昼と百合人くんもついてきた。


「もー、おじさん、もうちょい片付けなっていつも言ってるでしょ?」


背中を向けていても凛太朗先輩が口を尖らせているのが分かる。


わたしたちは凛太朗先輩の叔父さんだとかいう人に紹介されると、本をどけて椅子に座るよう言われた。


オジサンと凛太朗先輩がにこやかにわたしたちを促す。


凛太朗先輩に出会えたことを喜ぶ間もない。




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