悪魔的に双子。
「今、お茶入れるからちょっと待ってね」


凛太朗先輩は本の山の中からポットを発掘すると、かろうじて中身を取り出せる戸棚からコップを三つ取り出した。


器用に足場をとらえながら、お茶をいれてくれる。


突然の展開でいまいち現状把握ができていないのだが、偶然にしろ、凛太朗先輩に会えた喜びがじわじわと胸に広がってくる。


「ねぇ、君って、園村真昼くんだよね」


ふいに凛太朗先輩がクルクル瞳を瞬かせて真昼に尋ねた。


後ろを振り返ると、予想通り不機嫌な顔の真昼が、眉を釣り上げて凛太朗先輩を見ていた。


「……そうだよ、あんたは『リンタロ』でしょ?」


凛太朗先輩が意外そうに目を丸くする。


「俺の名前知ってるの?俺が園村くんを知ってるのはけっこう有名人だからなんだけど。あと、県体予選見にいったから。」


その言葉に、真昼が微かに口をまげた。


真昼たちの男子バスケ部は、結局、県体には進めなかった。


もともと弱小だし、今年も例に漏れずだったわけだ。


凛太朗先輩は楽しげにお茶を注ぎながら、真昼に微笑みかけた。


「君、すごかったねぇ、大活躍だった!シュート何回も決めて」


真昼はキュッと唇がすぼめると、


「ふんっ」


と盛大に鼻を鳴らした。


オジサンが本を覗き込んでいた顔をあげて面白そうに真昼を見た。


「何にも知らないくせに、何偉そうに評価してんだよっ」


子犬みたいにきゃんきゃん喚く真昼に、凛太朗先輩が首を傾げる。


「ゴメン、偉そうだった?」


凛太朗先輩の天然な受け応えに、さらに真昼の頬を引きつる。


わたしは小さくため息をついた。


ダメだ。


どうやら、真昼と凛太朗先輩は相性が悪いらしい。


「そちらのお兄さんは、どなた?」


凛太朗先輩は百合人くんに目を向けると、興味深げに見つめた。









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