悪魔的に双子。
人混みに紛れれば、まず見つからない。


わたしは外に出た後、人の間をかいくぐってできるだけ店から離れた。


胸が痛い。


誰かに八つ当たりしたいような衝動が身体中を駆け巡っていた。


ふいにジワリと涙が浮かんで、人に見られないように路地裏に入った。


ダンボールなんかが置いてあるそこは、狭くて暗くて暑くて、昔、真昼に閉じ込められた物置を思い出させた。


上を見上げると、建物の隙間から空が覗いていた。


切り取られた青は、どこまでも広い空よりずっと高く感じられた。


「りん…たろ先輩……」


わたしはしゃがみこんで膝に顔をうずめた。


先輩に嫌味のようなことを言って、店を飛び出してしまったことを後悔していた。


せめて、もう少し冷静でいられたら。


先輩がわたしのこと、わたしが想っているようには想ってくれないことぐらい、初めから分かっていたのに。


こんなことで取り乱してしまう自分の弱さに腹が立った。


真昼と百合人くんは、どうしただろう。


わたしのこと、探しているだろうか。


心配させてるかもしれない。


真昼はきっと、怒ってる。




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