悪魔的に双子。
わたしは息を深く吸って、大きなため息をつくと、無理矢理口元に笑みを浮かべた。


先ほどのわたしの間抜けぶりを振り返ってみると、真昼は怒るよりも笑うだろうと思い返した。


何、あわててたの?とさぞや楽しそうにからかってくれるだろう。


そう思うと、なぜか少し気が楽になった。


お店に戻らないといけない。


あのまんまにしたら、百合人くんも途方に暮れてしまうだろうし、凛太朗先輩も混乱したまんまだろうし、オジサンにはかなり失礼だった。


さっき会ったばっかだったのに、ろくでもないガキだと思われたかもしれない。


わたしは家出しながらも行くところがなくてしぶしぶ家に帰る小学生のような心境で立ち上がった。


一歩足を踏み出そうと力を入れる。


「……あれ?」


足が震えて、前に出ない。


わたしはもう一度歩きだそうとしたけれど、結局動けなくて、もう一度そこに座り込んだ。


内心、かなり動揺していた。


自分で思っているより、ショックだったのかもしれない。


体が、凛太朗先輩に向き合うことを拒否っているようだ。


「……どうしよ」


このまま家に帰ってしまおうか。


しかし、真昼と百合人くんを置いていくのは気が引ける。


二人はきっと、わたしが店に戻らなければ家に二人で帰ると思う。


今まで、わたしたち兄弟が一緒に出掛けてはぐれた時、そうしていたように。


そう思うと、急速に心が冷えた。


おいて行かれたくない。


誰かに気にかけてほしい。


自分勝手なその感情に気づいて、わたしは唇をかんだ。


「…青」


ふいに声がして、わたしは顔を上げた。


そこには、天使がいた。


正確には、天使みたいな顔した、わたしの義弟が。


真昼はふわりと笑った。


「よかった、青、見つかった」


その笑顔に心がじわりと温度を取り戻す。


わたしは気づいたら、真昼に抱きついていた。


肩に額をのせると、真昼の体温が伝わってくる。


汗と真昼の匂いがする。


わたしは静かにしゃくりあげた。


真昼はわたしが泣き止むまで、ずっと背中をなでてくれていた。
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