悪魔的に双子。
路地裏に並んで座って、真昼は静かにわたしの話を聞いてくれた。


「わたし、凛太朗先輩のことが好きなの。」


放課後、勉強をしていたわけではなく、凛太朗先輩がピアノの練習をするのを側で聴いていたこと。


いつの間にか、明るくて無邪気な凛太朗先輩の笑顔に惹かれていたこと。


一緒にいれるだけで嬉しくてたまらないこと。


「さっき、妹みたいって言われて、自分で思ってた以上にショックだったみたい。凛太朗先輩がわたしとおんなじ気持ちじゃないことは分かっていたのに、突然突きつけられてわけわかんなくなって。……ゴメンね、いきなりいなくなって」


わたしは俯く真昼に微笑んだ。


さっきまで泣いていたのだから、さぞや滑稽な顔をしていることだろう。


でも、こちらを向いた真昼は笑ったりせず、静かに言った。


「……まだ、わかんないよ」


「……へ?」


真昼の言葉の意味を理解できず、わたしは首を傾げた。


真昼はくいっと片眉をつりあげると、急に声を荒げた。


「だから!まだリンタロが青と同じ気持ちじゃないなんてわかんないって言ってるの‼」


真昼の言葉にわたしはキュッと唇を結んだ。


「わかってるでしょ、だって、妹みたいってはっきり言われたんだよ?」


「照れくさかったんだよ、中学生の男子なんてそんなもんだよ‼」


いつになく必死な表情にわたしは思わず苦笑う。


「やけに確信ありげだね」


「そりゃ、僕だって中学生男子だから、覚えがあるんだよ」


不意に真昼の頬が淡く染まり、わたしから顔を逸らして言った。


「好きな子相手に素直になれない気持ち」


……わたしは義弟に恐ろしく恥ずかしいセリフをはかせてしまったようだ。


普段なら絶対に言わないようなことを言って、わたしを励まそうとしてくれてる、真昼が嬉しくて、わたしはまた泣きそうになった。


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