悪魔的に双子。
オジサンに再度謝って、わたしたちは古本屋を離れた。


「……ご飯、食べる?」


わたしが提案すると、二人が声を揃えて答える。


「食べない」


「あ、そ。じゃもう帰る?」


わたしは帰りたい。


どっと疲れて、何かをする気分にはなれない。


「うん、帰ろ」


真昼がにっこり笑ってうなづいた。


「ねぇ、百合人くん、わたしがお店飛び出した後、凛太朗先輩に何か言ったりした?」


帰りの電車の中で何とはなしに尋ねると、百合人くんは首を傾げて、


「何か言ったっけ」


と不思議そうな顔をした。



どうやら記憶にないらしい。



ま、記憶に残らないことなら大したことではないだろう。


わたしは百合人くんの顔を見上げて言った。


「ゴメンね、心配かけたかな」


百合人くんは静かに首を振ると、


「青ちゃんといれて楽しかったよ」


と微笑んだ。


わたしも思わず微笑み返す。


百合人くんの隣は落ち着く。


あらためて気づいた。





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