悪魔的に双子。
「それ聞いて、俺、怖くなって逃げ出しちゃったんだ。……青ちゃんのこと、傷つけてるのかなって怖くなっちゃったんだ。」


先輩はそう言うと、唇を噛み締めてうつむいた。


先輩の顔が、どこか苦しげに歪む。


違う、こんな表情させたかったわけじゃない。


「先輩……好きです」


気がついたら、その言葉が口をついででていた。


先輩が再び顔をあげた。


瞳に驚きはない。


そりゃ、いくら鈍感な凛太朗先輩とはいえ、あんな怒り方してしまったし、かりにあの日には分かっていなかったとしても、考える時間はかなりあったのだから、気づいていて当然だろう。


それでも、ちゃんと言えたことにわたしは内心ほっとしていた。


「返事は?」


なんとも言えない顔をしている凛太朗先輩に、わたしは促すように微笑んだ。


唇をきゅっと噛み締めた先輩がわたしを見据える。


ふいに、凛太朗先輩の瞳からぽろりと涙が零れた。


頬を伝う涙に気づかないのか、ぬぐいもせず、先輩は言った。


「ごめんね、きっと青ちゃんのこと、そういう風には、好きじゃない。」


体の力が抜ける。


鈍い痛みと共に、目の前でボロボロ泣き始める先輩に、なにやらおかしい気持ちがこみ上げてきた。



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