悪魔的に双子。
「ちょっ、何先輩が泣いてんですかっ
ここ普通わたしが泣くところでしょうが」


くすくす笑うと、先輩は鼻をすすりながら頬を膨らませた。


「だって、つらいんだもん。青ちゃんのこと大好きなのに、こんなことしか言えなくて。……つか俺、初恋もまだだし」


「……そうなんですか」


静かな驚きをこめてつぶやくと、凛太朗先輩はこくりとうなづいた。


「みんな、初恋早すぎなんだよ。なんで幼稚園のころの恋バナまであるんだ?小学生の分際で付き合うだのなんだの言ってたやつらもいたし。」


子供っぽい口調がすっかり凛太朗先輩だ。


「それはわたしも思ってましたよ、ほんとに5歳児でも恋できるのかな、とか」


「無理だよ、常識的に考えて無理無理」


勝手に無理だと決めつける先輩と顔を見合わせて、わたしたちはふふっと笑った。


「……ねぇ、青ちゃん、もう、音楽室にはこない?」


不安げに尋ねてくる先輩に、わたしは微笑んだ。


「来ますよ」


「ホント⁉」


ぱっと顔を輝かせる凛太朗先輩に、頬が緩みそうになるけれど、必死で抑えた。


「でも、先輩はもうあんまり来ちゃだめだと思います」


「なんで……」


うつむく先輩に、軽い調子で言った。


「だって、先輩受験生じゃないですか」


先輩が目を見開く。


「そうだよ、俺、勉強しないと私立にも入れない」


やっぱり凛太朗先輩は何かと愉快だ。
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