悪魔的に双子。
新学期早々、夏休みの課題確認テストがあったらしい百合人くんは、夕方の6時に帰ってきた。


「おかえりなさい、百合人くん」


彼の帰りを待ち構えていたわたしは、ドアが開く音を聴くと玄関にすっとんで言った。


「……ただいま」


わたしの勢いに困惑したのか、ワンテンポ遅れて百合人くんが返す。


「百合人くん、凛太朗先輩に変なこと言ったでしょ」


早速本題にはいると、百合人くんは、はじめ何のことか分からなかったらしく、首を傾げた。


「凛太朗先輩はさざみ商店街の古本屋で会った男の子だよ。忘れたの?」


「……ああ、あの子か。」


ようやく合点したらしい百合人くんの顔に、何にも分かってない笑顔が浮かぶ。


「凛太朗くんがどうしたの?」


「どうしたもこうしたも……」


わたしはハァーっとため息をつきたいのをおさえて言った。


「凛太朗先輩は嫌な奴なんかじゃない。卑怯でもないの。先輩笑ってたけど、きっと傷ついてた。お願いだから、もう少し言葉を選んでよ」


わたしは少し怒っていた。


わたしが言いたいことを言ってしまうと、百合人くんの目がゆるゆると見開かれた。


「そっか、ごめんね」


「ううん、あやまって欲しいんじゃなくて、ただ百合人くんのためにも言っておきたかっただけなの。このまんまじゃ、家族の知らないところで変な敵作ってそうで心配だから。」


先輩に傷つくようなことを言ったことに腹は立っていたけれど、それ以上に百合人くんが心配だ。


唯流に対する心配と同様の意味でた。


本人の知らないうちに心ない言葉で人を傷つけて、敵を作ってしまうのでは心配でこっちの神経がやられる。


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