悪魔的に双子。
「えーっ、有志も劇なの?」


帰り道、わたしは双子の兄の顔をあんぐりと口を開けて見つめた。


「うん、なんかそうなった」


有志の顔がほんのり赤い。


有志本人が赤くなっているのか夕陽のせいなのかいまいち判然としないけど。


「去年は金魚すくいだっけ?」


「違う、ヨーヨー釣り」


有志ではなく、となりを歩く唯流が突っ込む。


「真昼くんも劇だよ」


「……へぇ」


あまり意外ではない。


真昼は家と学校ではキャラが違う。


家では暗い顔も見せるけれど、学校では活発で明るい良い子だ。


文化祭実行委員とは別の意味で、ある意味花形の劇は、学校での真昼にしっくりくる。


「真昼、今日はもう帰ってるかな」


唯流が心配そうな顔をして呟く。


「大丈夫だよ、今までだって、そこまで遅くに帰ってきたことないじゃない」


有志がにっこりと唯流に微笑みかけた。


真昼は相変わらず、バスケ部の子たちとたむろしながら帰っているのだけれど、二学期になって、少し帰ってくるのが遅い日があるのだ。


あくまでうちの家の基準での遅いにすぎないから、騒ぐほどではないのだけれど。


「劇ってどんなのやるの?」


なんとなく真昼の話題を避けたくなって、わたしは話しをそらすべく尋ねた。


「えーっ」


有志はさっきのわたしそっくりの声を上げて、頭をかいた。


「ごめん。教えれない」


「ほえ?そうなの?」


「うん」


有志の顔になんとも言えない色が浮かんだ。


「相原蓮さんのご意向です……」


わたしの脳内で、細っこくてチビっちゃくて、やけにデカイ眼鏡をかけた新聞部のエースがにやりと笑った。


「ああ……ね」






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