悪魔的に双子。
文化祭実行委員が作ったオープニングのビデオに、一年生の女の子のヴァイオリン演奏、クイズに天文部の発表とプログラムが続いていく。


そしてあっと言う間に蓮と有志と真昼が出る、『劇』の時間がやってきた。


演目はシンデレラだ。


継母と姉にこき使われるシンデレラが動物たちと協力して掃除をしているシーンから物語は始まった。


蓮が関わっているにしてはしごく真っ当な滑り出しで、正統派でいくつもりなんだろうかと拍子抜けした。


ある日、お城で舞踏会が開かれるらしく、継母と姉たちがシンデレラを残して出かけて行く。


お城の王子さまを夢見て、一人シクシクと泣いているシンデレラのもとに、一人の妖精が現れる。


その妖精さんはまごうことなく、蓮さんの扮装した姿だった。


自分では慈悲深い顔をしているつもりなのだろうが、にやにやして見えてなんか怖い。


シンデレラ、今のうちに逃げるんだ


と言いたくなったのはわたしだけではないと思う。


妖精役は少々難ありだが、シンデレラ役の子の演技がやたらうまくて、知りつくしているストーリーなのに結構面白い。


しかし、お城でシンデレラを出迎えた王子さまに、わたしはあんぐりと口を開けるしかなかった。


「有志⁇」


まさかの有志。


演目が分かった時点で、十中八九王子は真昼がやるんだと思ってた。


シンデレラと王子さまがダンスを踊る。


幸いにして、いや、もちろん意図的にではあるだろうけど、シンデレラ役の子が小さいから有志のちんまりっぷりが分からなくなっている。


しかし、女の子の堂に入った演技とは裏腹に照れているのが丸わかりだ。


「あの王子役の子かわいー」


と三年のお姉さま方のクスクス笑いが聞こえる。


うーん、うけてるから良いのではないだろうか。


もし、あとで有志が落ち込んでたら慰めてやろう。





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